2014年に発足し、「和食“鍋焼うどん”」×「伝統芸能“落語”」の魅力を多くの方々に伝達していくことを目指した文化啓発活動である『キンレイ心染プロジェクト』のインタビュー企画です。心染プロジェクトでは、落語を学ぶ大学生(落語研究会)のイベントや公演のサポートを行っています。コロナ禍で活動が制限されているなか、試行錯誤を繰り返しながら落語に取り組む大学生を応援します。
インタビュアーは心染プロジェクト卒業後、プロの漫才コンビとして芸能事務所(株式会社タイタン)に所属し活躍している「まんじゅう大帝国」の田中さん・竹内さんです。
竹内:第十一回「まんじゅう大帝国のおちけん部室訪問!」はICU(国際基督教大学)落語研究会のみなさんに出演いただいております!よろしくお願いします。
※以後、ICU落研
ICU落研 よろしくお願いします!
竹内 まずは自己紹介をお願いします。今回は3人が出てくれているのかな。先輩からお願いします。
米田 3年生の米田 昌生(よねだ まさき)と申します。高座名は境亭 黎楽磨(さかいてい りらっくま)です。落研では新作落語に興味があって、取り組んでいます。大学ではMCC(メディア・コミュニケーション・カルチャー)を学んでいます。
田中 よろしくお願いします。次は2年生かな?
内藤 はい。現在ICU落研の代表を務めさせていただいています2年生の境家 悧怜(さかいや りれい)です。本名は内藤 怜歩(ないとう れいふ)といいます。僕は3年生から言語学を専攻しようと思います。ICUでは3年生から専攻を決めるんです。
田中 言語学…?
竹内 言語学っていうと外国語とかでもないのかな?
田中 あんまり深堀りすると馬鹿がバレるぞ(笑)!
内藤 言語学は「言語って何?」って言うのが根源です。色んな言語に共通する特徴があって、そこから赤ちゃんが持っている素質がわかるはずなんですね。人間って育つ環境次第でどんな言語も取得できるんですけど、その初期設定にどんなものがあるかを究極的にわかりたいです。
竹内 へえ。すごいな!説明が上手だね!
田中 無理すんなって…。
竹内 そして、最後は?
上保 1年生の上保周平(うわぼ しゅうへい)です。竹内さんは日本学園のご出身ですよね?
竹内 うん。え!?
上保 僕はその近くの生まれで、その土地に多い苗字なんです。
竹内 あ!あの辺か!野球部のランニングでよく走ってたよ!
上保 高座名は境家 朱張(さかいや しゅばる)です。しゅばるはフランス語で馬という意味です。
田中 なんで急にフランス語なのよ(笑)。
上保 高校の時にフランスに1年留学していたっていうことと、競馬が好きなので。あと“張”に関しては、落研の他にICUのオーケストラでバイオリンを担当していまして。
田中 すごいね!1年生は何の勉強からするの?
上保 必修の英語の授業が多いので、まずはそこからです。
竹内 そうかそうか。ICU落研から、この前の策伝大賞※で優勝者が出たよね?
※策伝大賞:例年2月に開催される学生落語の全国大会。
内藤 そうです!今日はいませんが、4年生の境家ちがうさんが優勝しました。心染プロジェクトにも参加させてもらっています。
竹内 あ、そうだそうだ。ICU落研の活動内容としてはどんなことをしているの?
内藤 週に1回の部会が主な活動になります。部室に集まって、話し合いをします。稽古は必要に応じて行っています。年に3回、「三鷹寄席」という寄席をやっているので、会が近づいていてくると稽古をするって感じです。
竹内 なるほど。「三鷹寄席」以外に口演はあるの?
内藤 あとは「ICU祭」っていう学園祭での寄席がICU落研で決まった口演になります。その他は企画が持ち上がれば、落語会をやっています。早稲田落研とか法政落研とかと合同の寄席をひらいたりもしています。昨日も他の落研の人たちとの落語会があって楽しかったです。
田中 お、どこと?
内藤 ICU落研と駒澤落研、早稲田落研、東経(東京経済大学)落研が集まってやりました。
竹内 部員は何人いるの?
内藤 ええっと、諸説ありますが(笑)。ざっくり15人くらいですかね。
田中 なるほど、じゃあ本当は20人以上いるね(笑)。ICU落研として、慰問とかの依頼はあるの?
上保 コロナの影響で大分少なくなってしまいましたが、この前、行かせてもらいました。バイオリンも披露しました。
田中 へえ!お客さんは嬉しかっただろうね。みんなはコロナ直撃世代だから、特に人前で披露する回数は少なかったんじゃない?
米田 そうですね。特に私の代は大学自体が閉まっていて、新歓もされてなかったので部の存続も危ぶまれていました。なので今こうして続けることができて嬉しいです。私が1年生の時は境家ちがうさんと私の二人しかいなかったですから。4年生が卒業してしまって。
田中 おお、2人はきついな!よく耐えたね。それこそ新歓をやる側だった時は大変だったんじゃない?
米田 新歓の主戦場をSNSに移してやっていました。今はSNS担当がいて、日々の活動を発信してくれています。
上保 僕が担当してます。
竹内 おお!いいじゃん!
内藤 去年からインスタも初めました。
米田 インスタは最初、何を投稿したらいいかわからなかったので、部員のお昼ごはんを上げたりしてました(笑)。
竹内 でもそのおかげもあって、部員も増えて、活発に活動できるようになったんだもんね。ICU落研として最初に覚えないといけない演目とかあるの?
内藤 一応「最初に覚える噺リスト」がありますが、絶対的なものはないです。
米田 私は1年生の時に最初に『夢の酒』を覚えました。
田中 渋!!最初ってことは二十歳になってないでしょ?酒もなにもないじゃん(笑)。
米田 「徳利の大きさが違う!」って稽古されました。
竹内 おお!まさしく稽古だね!悧怜君は何を最初に覚えたの?
内藤 『権助魚』です。
田中 あれも大変な落語じゃない?田舎者のキャラクターとか。
内藤 高校時代は演劇部にいたので、演じ分けとかは苦じゃなかったです。
竹内 『権助魚』は覚えておくといいよね。万人に受けるし。朱張君は?
上保 『金明竹』です。
竹内 最初に覚える落語の王道だね!
田中 先輩二人はそのリストを無視してない!?
米田 私たちの代の時はなかったんです。私たちがあまりに好き勝手にやっていたので、先輩がしびれを切らして「最初に覚える噺リスト」を作って朱張の代から施行されたんです。
田中 なるほどね(笑)!他には何を覚えたの?
上保 『だくだく』と『擬宝珠』を覚えました。
田中 良いね!これからどんどん好きな落語をやっていってほしいね。ICU落研は雰囲気が良いね。風通しも良さそうだし。ICU落研って創設されてからどれくらい経つの?
米田 2016年にできたばかりです。
竹内 あ、そうなんだ!
米田 最近まで部室もなかったですし。
内藤 去年が躍進の年でした!部室をもらえて、公認サークルにもなって、部費ももらえるようになりました!
竹内 それで日本一にもなって。それこそ策伝大賞なんて学校のニュースだからね。
田中 ちゃんと学生課とかに伝えたら個人と部とで表彰されるからね。
竹内 僕が卒業してから名前を聞くようになって「ICUにも落研があるんだ」って思った記憶があるから。数年余りで公認サークルにもなって、日本一も輩出して、勢いがあるね。
田中 これから逆に変な慣習を作っていってほしいな(笑)。健康診断とか意味わからんやつ(笑)。これからますます盛り上がっていくだろうね。
内藤 頑張ります!話がガラッと変わってしまうのと、僕個人の話しになってしまうんですけど、この場をお借りしてお伝えしたいことがあり…。
竹内 お、どうした!?
内藤 お二人のファンでして。『実りゆく』を3回観に行きました。
田中・竹内 ありがとう!でも観すぎだよ!
内藤 舞台挨拶の時にサインもいただいて。吉祥寺のオデオンと新宿武蔵野館とで。写真も撮らせてもらって、勝手に家宝にしています。
竹内 嬉しいなあ!
内藤 映画の舞台の松川(長野県)にも行きました!
田中・竹内 ええ!?まじで?
内藤 『実りゆく』のモデルになった松尾アトム前派出所さんの農園に行ったらご本人がいらっしゃって、挨拶して写真撮って。それで松尾さんに宿まで車で送っていただいて。めちゃくちゃ嬉しかったです!
竹内 あったかいねえ!いやあ、嬉しいねぇ!
米田 今日のインタビュー企画も、悧怜から誘われたんですけど、今の話しを1.8倍速くらいでまくし立てられました(笑)。私からも質問してもいいですか?
竹内 もちろん!
米田 落研で落語をされていたお二人がプロとして漫才をされていますが、どのタイミングで落語から漫才にシフトしたんですか?
田中 そもそも僕らは落研に入る前からお笑いが好きで、たまたま落研で落語をやってたってだけなんだよね。だから、あんまり違和感はなかったかな。もちろん落語は今でも好きだけど。
米田 新作落語を作ったりすると「コントでも良いじゃん」って言われることがあって、「落語ならでは面白さにするにはどうしたら良いんだろう?」って模索する日々なんですけど、お二人はそういうのってどういうものだと思いますか?
竹内 落語は一人で全部やるから、上下を切って話すからこそウケる会話って絶対あるじゃない?落語でしか成功しない笑いがあって、僕はそれをやりたくて落研で落語をやってたかな。
田中 落研で学生が新作落語をやる時に陥りがちなのが、面白くしようとし過ぎて落語じゃなくなっていっちゃうのが結構あると思う。個人的には落語に合うボケ方みたいなのを探して作っていくのが良いような気がするかな。僕らの漫才は落語っぽいって言われることがあるんだけど、落語でやると成立しないと思うんだよね。だから、逆に考えると落語に合うボケとツッコミの間合いとか振り方があって、落語に合う力加減を考えるのが良いと思うな。頑張って面白いものを詰め込み過ぎなくても良いかもね。新作落語に関しては全く素人だから、あんまり信用しちゃいけないよ(笑)。
米田 勉強になります!
田中 落研で新作落語をやるのは絶対に良いよ。度胸も付くし。
竹内 落語を作ってウケたら自信が付くからね。
米田 確かに最近「厚かましくなった??」ってよく言われます(笑)。
竹内 そうなんだ(笑)。
田中 落研では古典でも新作でもやりたい方をやればいいと思うよ。落研ってどうしたって身内ウケが多くなっちゃって、古典をフリにしたりするだけでウケることが多いけど、それが楽しければそれでも良いと思う。ただ、そのやり方でウケて、大会とかでもウケるはずって思い始めちゃうとしんどくなってくるかな。とにかく自分が楽しければ良いと思うよ。
竹内 正解はたくさんあるし、人それぞれだからね。
田中 落研にいた身として思うのは、古典もしっかりやっていた方が、卒業してから「落語やってました!」って自信を持って言えるかな(笑)。
上保 自分にとって何を優先するかってことですか?
田中 うん。芸事をサークルでやるっていう歪な環境ではあるけど、芸(落語)に真摯である必要もないと思うんだよね。ウケたいならいわゆる邪道なことだってやって良いと思うし。
竹内 正座しなくたって良いと思うし。
田中 うん。自分たちの寄席で「一番ウケたい!」が目標だったら、高座で立ち歩いたって良いと思うよ。だから、自分の目標とかやりたい事を優先するのが良いと思うよ。
竹内 プロの落語家さんの音源を完璧にコピーするのだって「○○のでしょ?」って言われるくらいできれば、それはそれで良いことだと思うし。そこまで真似できるようになれば、自分の向き不向きもわかってくるから、そこを工夫していくと、自分のオモシロの部分は育っていくと思うよ。真似するんだったら、話し方からお辞儀の仕方まで全部真似すると後々、身にもなっていくと思うかな。だから「○○っぽいね」は誉め言葉として受け止めると良いよ。
上保 勉強になります!
竹内 良いね!これから楽しくなっていくよ!
田中 うん。戻りたいよ(笑)。
内藤 ぜひ!ICU落研で2回目の落研人生をどうぞ(笑)!
竹内 最後にこの記事を読んで落研に入るかもしれない高校生とかに向けて、みんなから一言ずつもらおうかな。朱張君からいってみよう!新歓だと思って。
上保 他の落研との交流が多くて、先輩方に感謝しています。色んな落研部員と交流できて、落研って個人プレーだと思っていたので、想定外のことで充実しています。
竹内 1年生とは思えない素晴らしいコメントだな!
内藤 この後嫌だなぁ(笑)。
田中 違うこと言ってね(笑)。
内藤 アマチュアの落語をお客さんが座って聴いてくれるって物凄く贅沢なことなので、それは何物にも代え難いです。落語って面白いけど、聴くのも演るのも難しいと思われがちなんですけど、そんなことはなくて、もっと多くの人にやってほしいし、聴いてほしいので、ぜひICU落研に入って一緒にやりましょう!
竹内 確かに社会に出て大勢の前で話す機会は中々ないって色んな人から聞くからね。そういう意味では落語をやっていた経験がありがたいって事に卒業してから気づくんだろうね。
田中 落研での経験が今の内から贅沢だと思えているのがすごいよね。当たり前だと思いがちだから。じゃあ、最後は3年生、締めてください!
米田 ICU落研の特長として、誰からも否定をされないっていうのが大学の自由な校風と相まって良いポイントだなと思っています。自分の考えた笑いを否定しないっていう考えが根付いているので。やっぱり神の御心のように…。
内藤 いやいや!なんか急に胡散臭いですよ!
米田 やっぱり、国際基督教大学なので!
竹内 “やっぱり”っていうのが恐いね(笑)。
米田 私たちはみなさまのオモシロを寛容に肯定しますので(笑)。楽しく自分の表現したいことができるので、ぜひぜひ、ICU落研にお越しください。
竹内 やりたいことができるICU落研は素晴らしい!本当に今が一番楽しんだろうなって思うよ。
田中 良い雰囲気だね。
竹内 卒業した他大のOBが好き勝手言ってるけど(笑)。羨ましい!これからも楽しんで!
【ICU落語研究会 プロフィール】
・プロフィール:ICU落語研究会は、2016年にできたかなり新しい落語研究会です!週1回の部会で部員で話し合いを重ねながら、自由に仲良く活動しています。現在は年に3回、主催の寄席である「三鷹寄席」を中心に、関東の他大学の落研とも連携しながら落語会に携わっています。入部希望の方は以下のオープンチャットにご登録ください!
・ICU落研へのお問合せはコチラ:icurakugo@gmail.com
【インタビュアー:まんじゅう大帝国 略歴】
株式会社タイタン所属の漫才コンビ。2016年6月コンビ結成。2017年4月デビュー。大学時代は互いに落語研究会に所属し、学生落語の全国大会で優秀な成績を残す。2017年4月に株式会社タイタンに所属しデビュー。フジテレビ系『ENGEIグランドスラムLIVE』『ネタパレ』などに出演し注目を集める。
【その他、受賞歴等】
- 国立演芸場 令和元年度「花形演芸大賞」 銀賞受賞
- フジテレビ「ENGEIグランドスラム」「ネタパレ」
- WEB CM パイロットコーポレーション フリクション「ネタ帳」
- MV ゼスプリゴールドキウイ「アゲリシャス」
- TBSラジオ「マイナビラフターナイト」月間チャンピオン(2017年6月/2018年11月)
- 第3回未完成映画予告編大賞「MI-CAN男優賞」(竹内一希)
- 2020年1月29日より、初のDVD「詰め合わせ」発売。
- 2020年10月7日より、第一回単独公演DVD 「私の番です。たしかにね。」発売。
- 竹内一希さん主演映画『実りゆく』が2020年10月9日(金)に新宿武蔵野館ほか全国の上映館で公開。「第63回ブルーリボン賞」作品賞にノミネート。2021年4月28日よりDVDが発売。
- 初の単行本『笑いの学校』が2020年12月19日(土)に河出書房新社より発売。
- 2021年10月9日放送の『オールナイトニッポン0(ZERO) ~決戦!お笑い有楽城~』にて優勝。
- 『まんじゅう大帝国のオールナイトニッポンPODCAST』が配信中。
- 2022年9月18日、ネタバトル「第4回ナルゲキ最強決定戦」にて優勝。
- まんじゅう大帝国・竹内出演の動画「落ち込みすぎな失恋ソング 『失恋すると人は何も手につかない』」が 第9回BOVAグランプリ受賞
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