INTERVIEWインタビュー&部室訪問

卒業生インタビュー

第一回 まんじゅう大帝国 前編

 2014年に発足し、「和食“鍋焼うどん”」×「伝統芸能“落語”」の魅力を多くの方々に伝達していくことを目指した文化啓発活動である『キンレイ心染プロジェクト』の卒業生インタビューページです。

 第一回目は心染プロジェクト卒業後、プロの漫才コンビ「まんじゅう大帝国」として芸能事務所(株式会社タイタン)に所属し活躍している田中永真さん・竹内一希さんに学生落語家として心染プロジェクトに関わった経緯や当時の活動内容に加え、参加したことが現在の活動にどのように活きているかなどを語って頂きました。

 
第一回 まんじゅう大帝国 前編

まんじゅう大帝国 左:竹内一希さん 右:田中永真さん

 

――キンレイ心染プロジェクト卒業生インタビュー第一回目ということで、まんじゅう大帝国のお二人から、心染プロジェクトの思い出話から現在のご活躍について伺いたいと思います。早速ですが、田中さんの心染プロジェクトへの参加はどういうきっかけだったんですか。そもそも、お二人は田中さんの方が竹内さんより一学年先輩ですよね。

田中 そうです。だから、あの時はまだ竹内はいなかったですね。僕が参加したのは、早稲田大学の落研OBの人が心染プロジェクトの立ち上げに関わっていて、その人から「ちょっと良いメンバー集めてよ」と声かけられたのが始まりです。

 

――なるほど。実際に参加してみて、いかがでしたか?

田中 心染プロジェクトは大人がしっかり絡んでいて、“キンレイ心染プロジェクト”って

いう看板を背負って出ないといけないから…。うん、ちゃんと“プロジェクト”って感じだったな。だから、最初は緊張もしました。あんまりふざけすぎたらダメかなとか、けど真面目すぎても心染プロジェクトが落研と組んでいる意味がないよな、とか。

 

――心染プロジェクトが発足してから一番最初に記者発表会をやりましたよね。

田中 ああ、あれは緊張しました。こんな感じなんだっていう。

 

――表立ってメディアの前に出るのはあの時が人生初ですか?

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2014年キンレイ心染プロジェクト発足発表会の様子 写真左端が田中永真さん

 

田中 そうですね。それまでは、ああいう正式な場っていうのはなかったです。たくさん写真を撮られたり、ネットニュースにも出たりして、良い経験です。

 

――記者発表会後、本格的に活動が始まったんですよね。

田中 最初は落語ができるきっかけが増えたなって思っていたんですけど、ただ落語をやっていくだけではダメでした。受け手に響くにはちゃんと古典をやった方が良いとか。古典のギャグとかを言葉はそのままで、どう現代の人に伝えるかっていう。そういう面白みが参加している僕らにだんだん芽生えてきた感じでした。

 

――演じる落語に変化が生じたってことですか?

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田中 はい。心染プロジェクトに参加して、受け手に「良いものを見た」って思ってもらうにはどうするかを考えるのは為になりました。そういうことが今の活動にも活きていて、芸人が面白いと思っているものと、受け手が面白いと思っているものは違うから、伝え方はこうしようとか考え方を工夫しようってなったのは、心染プロジェクトのお陰です。企業のPRっていう意味でも落語を活用できるんだみたいな勉強にもなりました。

 

――竹内さんはいつ頃から参加したんですか?

竹内 一通りの船出が済んだ後に、立ち上げメンバーの中にいた先輩に誘われたって感じです。参加してみて驚きました(笑)。「結構ちゃんとしたヤツだ」って。

 

――そうすると、竹内さんは1.5期メンバーと言えますね。

竹内 そうですね。僕の同期はまだいなかったです。

 

――竹内さんは日藝の落研に入っていましたよね?日藝落研※は外部からの依頼は多かったんですか?

※日本大学藝術学部落語研究会

竹内 結構ありました。

 

――具体的な違いなどありましたか?

竹内 やっぱり、企業が行っている活動だから、プレッシャーっていうか、ちゃんと結果を出さないといけないっていう意識の違いがありましたね。

田中 自分本位でやると迷惑が掛かるっていうね。

 
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竹内 うん。関わっている人が多いということと、それまでの日藝落研として依頼を受けて小学校とか老人ホームに行くのは勉強だと思っていたけど、心染プロジェクトに関しては結果を出しに行く感覚でしたね。

 

――平均点以上を常に出すっていう感じ?

竹内 うーん、“良い結果を常に出す”っていう感じです。

 

――竹内さんの学年から参加大学や人数が一気に増えましたよね。同期で誘い合ったんですか?

竹内 結構声をかけましたね。

田中 竹内の学年からかなり増えたね。

竹内 ちょうど関東の落語研究会の横のつながりが広がり始めた頃で、僕も心染プロジェクトに参加していたし、良いタイミングで一気に広がったんだよね。他とはちょっと違う経験ができるっていうんで、どんどん広がって参加大学・人数も増えた。そこで横に広がった流れを、後輩たちもつなげてくれたので。

田中 今どれくらいいるんですか?

 

――13落研・36名。卒業生が48名です。ちなみに心染プロジェクト発足時は5大学12名でした。

田中 すごい。本当に大きくなったんですね。僕らのものみたいに思っていたけど、もうそんなことないんだなぁ。

竹内 そういえば、出前授業って行ったことあります?

田中 それは行ったことないな。

竹内 出前授業は楽しかった!

田中 どんなことをやったの?

竹内 出前授業は『みそ豆』と『時うどん』を必ずセットでやって。

田中 食べ物の落語ね。

竹内 うん。それを心染プロジェクトメンバーが演じて、そのあと小学生に『みそ豆』の台本を渡して、短い話だからそれを覚えてもらって代表者に披露してもらうっていう。豆を食べるのを“あちちちちち”ってやってみたり。

田中 やっぱり、体験型だから学校としても呼びやすいもんね。授業っぽいもん。

竹内 小学生に落語を教えるっていうのが難しくて。

田中 そりゃそうよ。普通にやっても5分以上かかるでしょ?それを教えるんだから大変だ。

竹内 そう。でも難しかった分、ちょっとずつ時間内に収まるようになったり、伝え方も分かるようになって、子供たちが実際に披露するのを見るのは楽しかった。

田中 今良いこと言った!使って下さい(笑)。

竹内 で、そのあと給食を食べるんだけど、その日の献立に豆とうどんが組まれていて、着物姿のまま僕らも小学生と一緒に食べる。それも楽しかった。

田中 小学生の思い出にもなってそうだね。

竹内 丁寧に感想を書いてくれたりしてね。

田中 そういう子たちが大学の落研に入って、心染プロジェクトに入ってくれると良いね。「出前授業ってこれだったんだ!」っていう。

竹内 そうなったら嬉しいね。落語を好きになるきっかけになるとか。出前授業みたいな企画は心染プロジェクトならではかもしれない。

田中 たしかに、大学の落研だけじゃできないからね。

竹内 みんなおかわりしてほぼ完食しちゃって、給食室の先生とかになぜか僕がお礼言われたりもした(笑)。

田中 へえ、すごいな。

 

――自主的に食べさせるという点が高く評価されています。

竹内 さんざん「うめえ、うめえ」って落語で食べる練習するから、美味しいもんだって思うのかな。

 

――皆さんのお陰で、出前授業の依頼も徐々に増えてきています。

田中 反響呼んでいるんですね。口コミとか多そうだもんなぁ。地道な活動って一気に知名度が上がったりするから侮れない。

 

――心染プロジェクトに参加し、大学の落語研究会だけでは経験できない体験が印象に残っていると仰いましたが、そういった経験を経てお二人が社会に出て実感したことなどありますか?

田中 ここでいう“社会”っていうのは、つまり“お笑い界”っていう意味ですか?

 

――そうです。お二人がいる場所はある種独特の世界だと思うのですが。

田中 そうだなぁ。

竹内 なんだろうね。

田中 学生時代との違いってことだもんなぁ。例えば、心染プロジェクトや落研の活動で落語をやるっていうのは月に1、2回とか、前以って予定されていて。その本番に向けて練習してやるわけで、それが月に2回あるかないかで人前に出ていたのと、今みたいに週に4、5本ライブで漫才をやるっていうのは似ているけど全然違う作業。だから、“働く”って意味では社会に出ているっていうことにはなります。

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まんじゅう大帝国 左:竹内一希さん 右:田中永真さん

 

――気合いを入れる度合いが違う?

田中 プロとして活動する前は準備する時間に余裕があって、準備した先にハレの日があった。でも今は人前でやるっていうのはハレの日ではなくて普通のことで日常となっているってことですかね。

竹内 僕は社会に出て感じたことっていうと、テレビや雑誌のお仕事を頂いた時に現場での段取りとか手順のイメージは心染プロジェクトでの落語会を思い出すなぁ。仕事として捉えた時、物事の状況を把握するスピードが求められると思う。その点は心染プロジェクトを通じて無意識に培われていったんだと思います。

≪続く≫

 

~~次号ではまんじゅう大帝国結成時の様子やコンビ名「まんじゅう大帝国」に至った経緯、さらに、キンレイ心染プロジェクトへの期待などについて語ってもらいます。(次回は8月30日公開予定です。)~~

 

【インタビュアー:まんじゅう大帝国 略歴】

株式会社タイタン所属の漫才コンビ。2016年6月コンビ結成。2017年4月デビュー。大学時代は互いに落語研究会に所属し、学生落語の全国大会で優秀な成績を残す。2017年4月に株式会社タイタンに所属しデビュー。フジテレビ系『ENGEIグランドスラムLIVE』『ネタパレ』などに出演し注目を集める。

【その他、受賞歴等】

  • 国立演芸場 令和元年度「花形演芸大賞」 銀賞受賞
  • フジテレビ「ENGEIグランドスラム」「ネタパレ」
  • WEB CM パイロットコーポレーション フリクション「ネタ帳」
  • MV ゼスプリゴールドキウイ「アゲリシャス」
  • TBSラジオ「マイナビラフターナイト」月間チャンピオン(2017年6月/2018年11月)
  • 第3回未完成映画予告編大賞「MI-CAN男優賞」(竹内一希)
  • 2020年1月29日より、初のDVD「詰め合わせ」発売。
  • 2020年10月7日より、第一回単独公演DVD 「私の番です。たしかにね。」発売。
  • 竹内一希さん主演映画『実りゆく』が2020年10月9日(金)に新宿武蔵野館ほか全国の上映館で公開。「第63回ブルーリボン賞」作品賞にノミネート。2021年4月28日よりDVDが発売。
  • 初の単行本『笑いの学校』が2020年12月19日(土)に河出書房新社より発売。
  • 2021年10月9日放送の『オールナイトニッポン0(ZERO) ~決戦!お笑い有楽城~』にて優勝。
  • 『まんじゅう大帝国のオールナイトニッポンPODCAST』が配信中。

【関連リンク】

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