INTERVIEWインタビュー&部室訪問

卒業生インタビュー

第三十一回 早稲田大学落語研究会OB 入船亭扇太さん

2014年に発足し、「和食“鍋焼うどん”」×「伝統芸能“落語”」の魅力を多くの方々に伝達していくことを目指した文化啓発活動である『キンレイ心染プロジェクト』の卒業生インタビューページです。

第三十一回は早稲田大学落語研究会より心染プロジェクトに参加した、入船亭 扇太(いりふねてい せんた)さんが登場。インタビュアーはキンレイ心染プロジェクト卒業後、プロの漫才コンビ「まんじゅう大帝国」として芸能事務所(株式会社タイタン)に所属し活躍している田中永真さん・竹内一希さんです。

左:竹内 一希さん 中:入船亭 扇太さん 右:田中 永真さん

竹内 今回は前回に続き、僕と同学年で早稲田大学を卒業後、プロの落語家として活躍されている入船亭 扇太(いりふねてい せんた)さんに登場いただいています。

扇太 よろしくお願いします!お二人とお会いするのも久しぶりですね!前回、出演した雛菊さんから「その内、扇太兄哥にも話しが来るかもしれません…w」って話しがありました。妙に含みを持たせていましたが。

竹内 なんだそれ(笑)。落語家さんになった卒業生に出演してもらうのは3人目かな。

田中 そうだね。最初が柳亭 春楽(出演当時は楽ぼうさん)で。

扇太 ああ!そうですか!

竹内 そうそう。彼が前座になってすぐの時に師匠から許可をいただけて、早々に出てくれたんだよね。楽屋で一緒になったりしてた?

扇太 所属している協会が違いますが、何度か。春楽さんは評判がすごく良くて、私が所属している落語協会の仕事にも来ていましたね。落語協会の師匠だらけのところにいて。

竹内 彼は気が利くからなあ。「優秀な前座だ!」ってことだったのかも。扇太君は心染プロジェクトの立ち上げメンバーの一人だったけど、どういうきっかけで参加したの?

扇太 落研の先輩から紹介を受けて参加しました。

竹内 落語は落研に入る前から好きだったの?

扇太 いや、それまでは聴いたことなく、早稲田を一緒に受験していた友達が「一緒に落語研究会に入ろう」って誘ってくれて。ただ、その友達が受験中に音信不通になってしまい。私だけ合格して、彼はどうなったのか今でもわからず仕舞で。

竹内 あ、合格してからじゃなくて、受験前から誘われていたんだ!

扇太 そうそう。それで一人で入部したんですけど、早稲田落研は落語の実演は部をあげてやらずに、集まって和やかに話しをしてみたいなところで。ただ、先輩と落語の話しをしてもついていけなかったので、「寄席に行ってみよう」ってところから落語にハマって、落語もやるようになって。

竹内 落研ではどうやって落語を覚えていったの?先輩に教えてもらったり?

扇太 いや、教えてもらうっていうのはなかったですね。先輩に見せることはありましたが、別段何かを言われるってことはなく、あるとすれば、手が汚いとか見映えのところで指摘されるくらいで。

竹内 なるほど。そんな中、心染プロジェクトの誘いがあって、落語をやる機会も増えていったんだね。

扇太 そうです。心染プロジェクトでの落語も思い出深いですが、参加する時に試食した「鍋焼うどん」は美味しかったですね。

竹内 胃袋から掴まれたよね!「鍋焼うどん」は「味噌煮込みうどん」と一緒に今年8月にリニューアルしたよ!  

左:田中 永真さん 中:入船亭 扇太さん 右:竹内 一希さん

扇太 あ、そうなんですか!?それは食べないといけない。ラーメンの新商品も出たりして、ネットニュースとかでキンレイさんが取り上げられているのを見るとつい読んじゃいますね。リニューアルした「鍋焼うどん」と「味噌煮込みうどん」探してみます!

田中 最初に食べた時と同じくらいの感動が待っているはず!それで説明会があって、心染プロジェクトが発足する時に記者発表会に参加させてもらったよね。あの時は色んな落研から参加者がいたけど、やっぱり早稲田落研ののぼりを見た時はカッコいい!って思ったね!

扇太 あ!のぼり作ってもらいましたね!

2014年08月7日 キンレイ活動概要発表会での心染プロジェクト発足発表時の様子

竹内 やっぱり早稲田落研が並んでいると一気に締まるよね!

扇太 いやいや、そんなことないですよ!

竹内 一般的な知名度からみても、早稲田落研が参加してくれていたおかげで、目を引いたと思うよ。「出張落語会」とかに参加していたよね?この写真の時かな?

扇太 埼玉の入間の施設に行かせていただいたのは憶えています。あ!そうそう、懐かしい!まだ髪がある(笑)!恥ずかしいですね。

2014年10月31日レストヴィラ入間(埼玉県)での「出張落語会」にて『まんじゅう恐い』を演じる扇太さん

田中 2014年ってことは8年前か。演目は『まんじゅう恐い』だね。今もやってる?

扇太 やらないです。学生の時にやっていた噺はできないですね。変な癖が出そうになります。

田中 落語家さんはよくそう言うよね。 

扇太 集中もできないんで(笑)。

竹内 落語家になるっていうのは、なにかきっかけがあったの?

扇太 学生の時にアルバイトしていたお店が柳家喜多八師匠御用達のお店で、それがきっかけになるかもしれません。

田中 あ、喜多八師匠がまくらでもよく話していたお店だよね!焼き鳥屋だっけ?

扇太 そうです。我々バイトより店にいたと思います(笑)。

田中 直接話したりしたの?

扇太 はい。

田中 すごい!どんなことを話すの?

扇太 落語の話しはごくたまにで、とりとめのない、よもやま話が多かったです。「落語家さんも同じ人間なんだ!」って思いましたね(笑)。

田中 めちゃくちゃいい思い出だね。

扇太 それで、ウチの師匠(入船亭 扇遊師匠)も喜多八師匠と仲が良かったので、たまに二人で来たりもしていて。二人が楽しそうに飲んでいる姿を「ああ、楽しそうだなぁ」って思いながら働いていました(笑)。喜多八師匠をきっかけにウチの師匠も聴いてみようと思って、トリを取っている日に行ったらものすごい落語をやっていて。

竹内 確かにすごいよなあ!迫力というか、オーラというか。オンオフのギャップを目の当たりにしたんだね。

扇太 それで衝撃を受けて、入門を決めました。

田中 そういう流れだったんだ。縁を感じるね。じゃあ、弟子入りする時も「ああ、君か!」みたいな感じだった?

扇太 早稲田落研でもお世話になっていたので「おお、どうしたの?」ってなって「弟子にしてください。」と言ったら物凄いビックリしていましたね(笑)。

田中 「君がか!」ってなったんだ(笑)。それから何回かやり取りはあったの?

扇太 最初は「一回考え直して、まだ思っているようだったらおいで。ただ明日来たらいいもんじゃないからね。」って言われて。

田中 ああ、なるほど!

扇太 それで2~3週間考えて、もう一回行って「もう来ないかと思ったよ。じゃあ、ちゃんと会って話し聞くから」となり、入門前に三回ほど会って、お許しを得て入門しました。

竹内 やっぱり前座期間は厳しかった?

扇太 そうですね、今でも怒られますね(笑)。

竹内 あ、そうだ!二つ目昇進披露の時の上野・鈴本でのまくらを思い出した!

左:入船亭 扇太さん 右:竹内 一希さん

扇太 そうだ!来てくださったんでしたね!

竹内 扇遊師匠から「よく耐えた…。」って、やっと褒めてもらえたと思ったら「俺がな!」って(笑)。すごく面白かったなぁ。

扇太 いやいや、舞台の数でいったら二人の方が多いじゃないですか。

田中 全然、数だけだよ。やっぱり落語家さんの二つ名昇進の“一人前感”がお笑いでは中々ないもんね。落語家さんは稽古をつけてもらって、これなら問題ないって許可が下りてから高座に出れるわけだから。

扇太 確かにそれはそうですね。

竹内 その積み重ねを何年も経て、二つ目になるってことだから。今、こうして会えて、すごい感動してるもん。扇太くんの苦労を勝手に嚙み締めて「いやぁ、良かったなぁ!」って(笑)。

田中 なんも知らねえだろ!でも落語家さんになるって大変だし、勇気がいることだと改めて思うよね。前座期間はどれくらいだったの?

扇太 見習いを含めて5年ですね。

田中 5年もやったら、落語界の仲間として馴染んでいくかもしれないね。

扇太 まだ、二つ目に上がる前に、馬風師匠※に「扇ぽう(前座名)!」って呼ばれた時はビックリしましたね。でも馬風師匠に認識されていることがわかって嬉しかったですね。
※十代目 鈴々舎馬風。扇太さんが所属する一般社団法人・落語協会 最高顧問

竹内 こういう質問もアレだけど、前座時代の失敗とかってある?

扇太 ん~、国立演芸場で立前座※で楽屋の差配をしていた時に馬風師匠が楽屋にいらして「テレビ点けろ!!巨人やってんだろ!」って。それも含めてそれは立前座の責任なので。
※立前座(たてぜんざ):楽屋から舞台進行など全てを差配する一番年長の前座

まんじゅう大帝国 ははははは(笑)。師匠が快適な空間にしないといけないもんね(笑)。

左:田中 永真さん 中:入船亭 扇太さん右:竹内 一希さん

扇太 馬風師匠が巨人好きなのは周知ですから。「ああ、怒らせてしまったなぁ」と…。

竹内 難しい世界だ(笑)。他にもいっぱいやらなきゃいけいこともあるだろうに(笑)。

扇太 野球、政治、宗教の話しはしない方がいいって言われましたね。

田中 誰かの気持ちを害する可能性があるもんね。扇遊師匠以外で稽古をつけてもらったりはするの?

扇太 一門の兄弟子とかが多いですかね。あ、稽古とは別の話しになりますが、前座の時に林家正蔵師匠に可愛がってもらいました。前座の期間がコロナの影響で半年伸びていたので、「もう少しだから、頑張れ」って声をかけていただいたり。

竹内 正蔵師匠って上方の噺とか珍しい噺をやることが多いから、聴きに行くと楽しみなんだよね。一門ごとによって色があると思うけど、入船亭はビシっとしているイメージがあるなぁ。

扇太 大師匠※が楽屋では優しいけど、弟子に厳しい方だったそうで、礼儀・挨拶とか人として基本的なことは全部直されましたね。電話する時間とかも厳しく教えてもらったり。話し方もそうですね。
※九代目・入船亭 扇橋

入船亭 扇太さん

田中 すごいね!落語家を作っているんだね。変な話だけど、年を重ねた時には教えられた礼儀・作法が全部パワハラになっている可能性もあるよね。

扇太 ああ、そうですね。今は時代と伝統の間にあるので、難しくはなってくるかもしれませんねぇ。でも、私は入門する時に師匠から「俺が入門してくれってお願いしているわけじゃないから嫌なら、いつでも辞めていい」って言われましたね。

田中 それはそうかもしれないね。辞めないってことは本人がやりたいわけだからね。

扇太 見習い期間の半年間は師匠の家に通って、朝起きて師匠の家に通うという日々で、一日一回は怒られていましたね。

竹内 家なんて友達が来ても嫌な時があるんだから。それが息子ほど年が離れているんだもの、怒られるだろうね(笑)。

田中 扇遊師匠って家にいる時は何を食べるの?お昼とか。

扇太 ああ、そばが多いですかね。

田中 できすぎだよ(笑)。

左:田中 永真さん 中:入船亭 扇太さん 右:竹内 一希さん

扇太 仕事の日はある程度食べるものも決まっているのかもしれません。ルーティン的な。仕事の時間から逆算して、食べるものを決めるみたいな。

竹内 確かに落語は胃腸の状態も重要だろうし。満腹の状態でトリ取ったりするのは大変だろうし。

田中 この前、橘家文蔵師匠と仕事でご一緒させていただいた時もそうだったもんね。「お腹空いてるけど、出番前だから、お弁当食べない!」って長い高座が終わって、お弁当パアーって食べて、そのまま出演者で打ち上げ行ったんだけど、お腹いっぱいだから打ち上げ会場で「何も食べられ ⒝ない…。」って(笑)。

竹内 「これ美味しいんだよ。食いな…。」って(笑)、「知ってんだ、これ、うまいの。」

田中 悔しがってたね(笑)。

竹内 そうそう、2年前に心染プロジェクトの取り組みとして「落研グランプリ」って大会形式のオンラインイベントをやったんだけど、その時に僕がいた日芸落研OBの入船亭扇橋師匠(当時は二つ目・小辰さん)に審査員をやってもらったんだよね。

田中 うん。ちょうどあの時期に仕事でお会いして「なんか今度、大学生が大会をやるって言われてその審査員を頼まれたんだけど、君たちもいるの?あ、いない!?そうかあ、いや他の審査員の人もOB・OGなんだけど、落語家は僕だけなんだよねぇ。責任重大だなぁ」ってぼやいていて(笑)。「落語を代表してお願いします!」って伝えて「勘弁してよぉ」って弱ってたね(笑)。
※編集補足:入船亭扇遊師匠に加えて、昔昔亭喜太郎さんにも審査長としてお力添えいただきました。

扇太 そんなことがあったんですね(笑)!

竹内 僕らも心染プロジェクトのOBとしてなにか、落語会的なことやりたいね。

扇太 ああ、良いですね!他の卒業生で落語家になった人も二つ目に上がりますし。

竹内 現役生とも関われるとまた楽しいかもね。

扇太 そうですね。色んな人と繋がれる機会があればいいですね!現役生も多くの人と関わりを持って、なんでも臆せずやると良いと思います!

 

【入船亭 扇太さん プロフィール】

入船亭 扇太さん

2016年に早稲田大学文化構想学部卒業。2017年に一般社団法人落語協会・真打 入船亭 扇遊に入門し、2018年に前座となる(前座名・扇ぽう)。2022年5月に二ツ目に昇進し「扇太」に改名。
プロフィール(落語協会HP)
公式twitter
・お問い合わせ先:sentairihunetei@gmail.com

  まんじゅう大帝

【インタビュアー:まんじゅう大帝国 略歴】
株式会社タイタン所属の漫才コンビ。2016年6月コンビ結成。2017年4月デビュー。大学時代は互いに落語研究会に所属し、学生落語の全国大会で優秀な成績を残す。2017年4月に株式会社タイタンに所属しデビュー。フジテレビ系『ENGEIグランドスラムLIVE』『ネタパレ』などに出演し注目を集める。

【その他、受賞歴等】

  • 国立演芸場 令和元年度「花形演芸大賞」 銀賞受賞
  • フジテレビ「ENGEIグランドスラム」「ネタパレ」
  • WEB CM パイロットコーポレーション フリクション「ネタ帳」
  • MV ゼスプリゴールドキウイ「アゲリシャス」
  • TBSラジオ「マイナビラフターナイト」月間チャンピオン(2017年6月/2018年11月)
  • 第3回未完成映画予告編大賞「MI-CAN男優賞」(竹内一希)
  • 2020年1月29日より、初のDVD「詰め合わせ」発売。
  • 2020年10月7日より、第一回単独公演DVD 「私の番です。たしかにね。」発売。
  • 竹内一希さん主演映画『実りゆく』が2020年10月9日(金)に新宿武蔵野館ほか全国の上映館で公開。「第63回ブルーリボン賞」作品賞にノミネート。2021年4月28日よりDVDが発売。
  • 初の単行本『笑いの学校』が2020年12月19日(土)に河出書房新社より発売。
  • 2021年10月9日放送の『オールナイトニッポン0(ZERO) ~決戦!お笑い有楽城~』にて優勝。
  • 『まんじゅう大帝国のオールナイトニッポンPODCAST』が配信中。
  • まんじゅう大帝国・竹内出演の動画「落ち込みすぎな失恋ソング 『失恋すると人は何も手につかない』」が 第9回BOVAグランプリ受賞

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